「うぃんたー☆まじっく」
ばぶこ


(御題:「Winter乙女」「わかめ」「この上なく駄目な方向に」「サボテン」)


 雪が静かに舞う夜だった。
 鈴香はふうと息をついて手元の編みかけのマフラーに目を落とす。
 ――よし、この分なら間に合いそう。受け取ってもらえるかはわからないけど。ううん、きっと喜んでくれるはず。
 サンタさん、願わくば、私の想いを叶えて――

 その時。

    ―――ドンガラガシャーーーーーン

「…な、何!?」
 突如窓ガラスが割れ…目の前には小さな女の子。その背中には、羽。
「はぁい☆私の名前はWinter☆乙女!アナタの願い、叶えにきましたっ!」
 ……なんか変なの来たーーーーーー。
「あ、あんた何よ!?何でいきなり窓から入ってくんのよっ!?」
「ノーノー。「あんた」じゃなくて、Winter☆乙女!」
 少女は口を尖らせ、ちっちっと人差し指を振ってみせる。
「んー、ホントはサンタクロースっぽく煙突から入ってこようとしたんだけどねっ☆この家煙突無かったから、窓から入っちゃった」
 鈴香は30秒前の自分を激しく後悔した。
「ほらほら、そんなシケた顔しないっ!そんなアナタに、プ・レ・ゼ・ン・ト☆」
「え?ほんとに?」
 驚く鈴香の目の前にいつの間にやら可愛くラッピングされた大きな箱。
「何だと思う?」
「えー、わかんないよ」
「あなたの欲しがってた、ハ・ニ・ワ☆」
「欲しがってないし!」
 激しくツッコミつつもとりあえず箱を開ける。
 そして目の前に姿を現す巨大な…。
「ぢゃーん☆世にも珍しい緑のハニワ!」
「ってサボテンじゃんコレ!」
「何言ってんの、ハニワよ、ハニワ☆ほらこんなに可愛い」
「いや刺さってる、トゲ刺さってるし!それに顔とか無いじゃん、コレ」
 Winter乙女はハニワ(?)をなでまわしていた手に刺さりまくったトゲを見て…ようやく自分の間違いに気づいたらしい。
「えっ…うそ、間違えちゃった…?」
「そうだね」
 そろそろつっこむ気力も失せてきた。…何やってるんだろ、私。
「ゴメンね、今度はちゃんとハニワ持ってくるから」
「いやそもそもハニワ欲しいとか言ってないし」
「え!?あ、あれ??」
 少女はおろおろして私とサボテンに交互に目をやり、…やがてその場にわっと泣き崩れた。
「ああ、もう駄目!私ったら、こんなだから、こんなだからいつまでたっても一人前になれない~~っっ」
 鈴香はハァ、と溜め息をつきつつも彼女にちょっぴり同情を覚えた。よくわからないけど、この子にはこの子なりの事情があるのだろう。張り切って頑張ったのに、なんでかうまくいかなくて。
「まあ、そういうこともあるわよ。気にしないで、次がんばりな」
「うっ…す、すびばせん~~~」
 泣きじゃくる少女の頭を撫でて慰めながら、割れた窓ガラスの外の雪をぼんやりと眺める。
 ――今日は変な日だ。

「私ぃ、妖精見習いなんです。女の子の願いを叶えて回るのが仕事なんですけど、あの、なんか、私ってば落ちこぼれで、それで…」
 とりあえずこの子の素性にはつっこみを入れない事にする。それにしても、
「そういうのってさぁ、普通もっとこっそりやるもんじゃないの?堂々と姿見せてしかも素性明らかにしちゃったりしていいの?」
「あ、えと、あの、それは…ああああああああ」
 再び泣き出しそうになるのを慌ててなだめる。
「わ、わかるわかる、何やってもうまくいかないときってあるよね。仕方ない、仕方ないって。運が悪かったのよ」
「うう……」
 そう。何をやってもうまくいかないときがある。――今の鈴香がまさにそうだった。この子も私と同じで、悩んでるんだ。その気持ちは痛いほどよくわかる。
 ――でも、だからこそ、絶対失敗したくないこともある。
「そうだ、そういえば」
 こんな事をしている場合ではなかった。机の上にふっと目をやる。
 クリスマスイブは、明日。のんびりしてる暇はない。
「カレシにプレゼント?」
 いつの間にか立ち上がった少女が鈴香の目線を追って机の上を覗き込む。
「んー、まだ彼氏じゃないんだけどね」
「じゃ、クリスマスに告白ねっ!」
「うーん…まあ一応そのつもりではあるんだけど…」
 躊躇いがちに目を伏せる鈴香の様子を少女は不思議そうに眺める。
「部活の先輩でね、すごく優しくて素敵な人なんだけど。あんま自信ないんだよね、実は。私が一方的に憧れてるだけだし。そもそもプレゼント渡して受け取ってもらえるかどうかもわかんないし」
「そんな、気持ちを込めて作ったプレゼント、もらって悪い気するわけないわよ!」
「ありがと。でも…やっぱ迷っちゃうのよね。私なんか、迷惑なんじゃないかな、とか」
 一度マイナス思考になってしまうとどんどん悪い方に考えてしまうのは鈴香の悪い癖だった。彼には実はもう彼女がいるかもしれない。苦労して編んでも彼の好みに合わないかもしれない……こうなると思考はこの上なく駄目な方向へと転がり落ちて行く。もしかしたらその場でつき返されてしまうかもしれない。いや、優しい人だからそんなことはしないだろう。その場では笑顔でもらってくれて、あとで処分に困るのかもしれない……
「そんなことないわよ!」
 ふいに少女の声が鈴香の思考を打ち切った。
「そんなことないわよ!だって、だって…」
 少女は必死になって叫んだかと思うと、すっと声を和らげて、
「だって……アナタ、優しいもの」
 鈴香が目を丸くして顔を上げると、少女は無邪気に優しく微笑んだ。それは、まさしく妖精の笑顔だった。

「よし、じゃあ、こうしましょっ☆アナタの目標は、その人に想いが通じること。私の目標は、アナタの想いを叶えること。どっちが達成できるか、競争!」
「いやそれ競争になってなくない?」
「え?……ああ!」
 いちいちオーバーリアクションな少女の様子に鈴香は思わず笑い出した。少女もつられて笑った。
「いいわ、二人で一緒に目標を叶えましょ」
「うんっ!」
 部屋中に明るい笑いがあふれる。少女の笑顔を見ていると、不思議と今なら何でもうまくいく気がした。

 そして、そろそろ夜も明けようかという頃。
「完成ーっ!」
「やったー☆おめでとーーーっ!」
 ずいぶんと予定が狂ってしまったが、何とか間に合った。あとはカードにメッセージを添えて、きれいにラッピング……
「…………あああああっ!!」
 鈴香の突然の叫びに少女は2メートルほど飛びのいた。
「ど、どうしたの?」
「…ラッピング、用意してない」
「ええっ!?」
「どうしよう…今から買いに行ってたんじゃ、間に合わないよぉ」
 鈴香は完成したマフラーを手に途方にくれた。せっかく朝のミーティングの前にわざわざ時間をとってもらったのに。
 もうこのまま渡してしまおうか。いや、それともこれはやっぱりやめておけというお告げかもしれない。そもそも始めから、うまくいくはずなんてなかったんだ――
「あきらめちゃだめっ!」
「でも……」
 すると少女は急に部屋を飛び出し、台所を漁りだした。しばらく悩んだあげく不安げに戻ってきたその手には…わかめ。
「うまくいくかわからないけど…」
 そして精神集中してなにやら呪文らしきものを唱える。
「…えいっ☆」

 ぼぅん。

「うわぁ…!」
 そこには、床一面のきれいなリボン。深緑の毛糸によく合う、鮮やかな緑。
「ふふ、成功ねっ☆」
「すごいすごいっ!ありがとう!」
「さ、早く早く!部活始まっちゃうよ」
「おっといけない、急がなきゃ」
 緑のリボンで、きれいにラッピング。カードも忘れずに添えて。
「ありがとう。ちょっとだけ、自信わいてきたよ」
「アナタならきっと大丈夫。頑張って!」
「うん。じゃ、行ってくるね」
「ファイトッ☆」


「あの、先輩、よかったら、コレ…」
「え、僕に…?何だろう、あけていいかな…?」


 雪の静かに舞う朝。
「ふふ☆うまくいったみたいねッ」
 そうしてWinter☆乙女はまた誰かの願いを叶えるため、悩める乙女を探しに行くのです。

                                     END.

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(あとがきらしきもの)
 ふふ…ひどいですね…どうしようもないですね…つっこみようもありませんね…
 これでも昔はベタあま少女作家目指してたんだけどな…
 いや、わかってるんだ。おいらには青春爽やか系なんて無理だってことくらい。
 ほら、なんていうか、不可能に挑戦したくなるお年頃なのよ(そんなに若くない)
 しかも御題の使い方がまた。なんのひねりもありませんな。ダメだこりゃ。
 まぁ私の書けるもんなんてこんなもんです。
 書いててそれなりに楽しかったのでよしとします。
 
 ……さて、気晴らしに痛いものでも書こうかな(何)


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